聖地。
SECRET HEAVEN
重く空を覆う鈍色の雲。
砂埃だけが吹き抜ける人の気配のない町。
まさに放棄された地。
仮説観察小屋と呼ばれるシェルターがたどり着いた
荒廃した町をどれくらい彷徨っただろうか
私は一匹の野良猫を見つけたのだった。
その猫はまるで私に「ついて来い」
とでも言わんばかりに振り返って私を見たのち歩き始めた。
私が追いつきそうになると走って逃げるくせに
角を曲がった時は必ず振り返って私を待っている。
そんな野良猫との追いかけっこをしている中で
私の前にあの看板が突如姿を現す。
砂埃と錆に汚れてしまってはいたが
それはまさに生物学者E何某博士著の「猫の生態Mの記」
で見た白と茶色と黒の三色の看板
「そうか彼らはココを目指していたのか?」
そんな考えが脳裏をよぎった時
何かとても重いものに押しつぶされるような感覚が私を襲った。
まるで空を覆う鈍色の空が落ちてきたような
薄れいく意識の中で猫の鳴き声が聞こえた気がした。
普通に客商売をしていれば
宣伝をしてお客さんに来てもらえるように
色んな努力をするものだ。
例えばそれが病院や学校のような施設だとしても
私立で経営しているとするならば
患者さん学生さんが集まらなければ成り立たない。
不思議な事に
私が知っているその整体院は宣伝をしていない
それどころか看板さえなかったのだ。
整体院をしているような事はブログに書いていても
連絡先や大まかな場所さえ載っていない。
いかな本人が隠れ家的な整体院を目指していたとしても
探してくれる人がいて初めてかくれんぼは成立する。
発見されなければ無いに等しいのだから。
そんな私の思いが結実したこの看板を送ろう。
それが私の信者としての証だからだ。
~生物学者E何某博士著「猫の生態Mの記」より抜粋~
act.14 SECRET HEAVEN
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