疑念。
一つ不思議に思っている事がある。
毎日毎日尽きることなく目の前を流れていくチビ猫たち。
彼らはいったいこの先何処へ向かうのか?
私が生まれ育った南半球の大陸なら
この広大に広がる砂漠のところどころに町が点在し
町に辿り付き無事に防砂壁を乗り越えられた猫は
町に住み着き野良猫となり
宿るべき家を見つけて庭猫となる。
そう教えられて育ったし
実際に今読み返している「庭猫理論」にもそう書いてある。
がしかし
私が今いる場所は北半球なのだ。
「天変地異により放棄された」と学校で習った北半球なのだ。
このまま流れて続けても町など無いはずなのに。
「彼らはいったい何処から来て何処へ向かうのか?」
庭猫理論の冒頭の言葉が
何度も私の頭の中で繰り返されている。
想像してみて下さい。
辺り一面を砂漠に覆われ高い防砂壁に囲まれた町で
暮らし続けるしかない世界を。
インターネットはおろかテレビやラジオさえもなく
外界との通信手段が非常に限定されてしまった世界を。
書き手にとってなんて都合のいい
では無くて今の情報が溢れかえる世界とは
間逆の閉鎖された環境をどうか想像してみて下さい。
西暦2200年の終り頃
その頃の人口の殆どは天変地異の災悪を比較的受けなかった
南半球に集中していた。
そしてその世界の中心にいた一部の権利者達は
驚くべき決断を下したのだった。
どうせ渡航手段も限られ費用も莫大にかかるのならば
「北半球の生存者は無かった事にしよう」
こうしてこの星における人類分布は権力者にとって
都合よく書き換えられ
北半球の大陸は忘れ去られた地となっていくのである。
西暦2400年中頃のお話
かつて文明と繁栄の粋を尽くしていた水と緑の惑星は
砂漠と猫の惑星となっていた。
が、それでも
人類もなんとかしぶとく生き延びていた。
その星のいたる所で。
「某国のEです 」エピソード7~猫の惑星~
act.6 PARADISE LOST
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※この物語はフィクションです※
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