夢幻。

かつて我が郷土が生んだ剣聖が編み出したものに
生まれた場所や競技の種類は違えど北の大地にて挑んでいる若者がいる。

天下無双の二天一流とも呼ばれるその剣技は
剣聖が剣聖だからこそ使いこなせる唯一の天技だとするならば
まだ挑み始めたばかりの彼に
シーズンもたった２ヶ月過ぎただけだというのに
やれ打者が向いているとか投手に専念したらいいのにとか
その夢に挑むことさえ出来なかった人達が
もっともそうにテレビで色々語るのが歯がゆくって仕方無い。

かつてトルネードを纏いし豪腕が海を渡った時も
天才安打製造機が海を渡った時も
ネガティブ論を並べ立てていたのは海を渡ろうとさえしなかった
いや海を渡るなんて発想さえできなかった人達で
その挑戦に共感できる先人たちは期待の言葉を発していた。
以前ダイアリー版にも書いたけれどやはり
イチロー君を真に語って良いのはイチロー君だけで
江川氏を真に理解できるのはやはり江川氏だけなのだ。
一部の、ほんの一部の人達にしか見えない景色はきっと存在する。
だから僕はその景色をあの若者に是非とも見て欲しいのだ。
その景色が望める頂きまで登りきって欲しいのだ。

幸いな事にその若者にはその挑戦に臨める環境がある。
彼の存在を理解し夢への道を決して阻まない球団と
周りに様々な事を言われるのも覚悟の上で
共にその夢に挑もうとしてくれる監督と
何より
そんな若者を歓迎し背中をしっかりと押してくれる
北の大地の心豊かなファンの皆さまが見守ってくれている。
アメリカ帰りの稀有な存在をありのままの姿で受け入れ
偉大なるエースの真意をくみ取り拍手で見送れたあのチームなら
壮大な夢に挑む若者をずっと応援してくれるだろうから。

高卒のルーキーが初登板で５回２失点。
１イニングさえモタナイ投手さえいる中で上出来ではないか。
しかもあれだけの観客を動員し沸かせているではないか。
興行スポーツとしてならばすでに大成功ではないか。
細かいミスをあげつらって苦言を呈する前に
もっともっとしてあげられる事はあるんじゃないか。

偉大なるミスタープロ野球がグランドをさってはや四半世紀以上が過ぎた。
そろそろ次なる英雄が
誰もが認める次なる英雄が現れても良い頃だ。